2008年6月17日火曜日

機動警察パトレイバー

『機動警察パトレイバー』(きどうけいさつパトレイバー、Mobile Police PATLABOR)は、1988年を基点とした10年後からの数年間の近未来の東京を中心とした地域を舞台とした漫画およびアニメ作品である。

原作はヘッドギア。本作はメディアミックスと呼ばれる手法が導入された作品であり、アニメ版と漫画版が存在する。どの作品も基本設定は同じでキャラクタや登場メカなどはほとんど共有しているが、それぞれの作品が持つ雰囲気は大きく異なる仕上がりとなっている。

アニメ版と漫画版ではストーリー展開が異なり、アニメ版でもその時間軸上の繋がりには諸説存在する。OVA第1期・劇場版1作目が同一時間上で描かれているのに対して、TV版・OVA第2期が微妙に異なる設定で描かれている為に別の世界と考える意見も有る。劇場版2作目はOVA第1期・劇場版1作目と同じく押井守監督作品だが、公開当時のテレフォンサービス等ではTV版・OVA第2期に連なる世界である事が明言されており、特車二課棟の所在地もOVA第1期・劇場版1作目で設定されていた城南島の埋立地には存在しない。劇場版3作目は漫画版における「廃棄物13号編」をベースとしながらも、公には「パラレルワールド的なニュアンスを含む」という意図的に曖昧な位置づけがなされている。非公式ながら劇場版1作目と2作目の間に位置する世界観を想定して製作が進められたとのスタッフの証言もある一方、実際には劇場版1作目、2作目とTV版の登場人物や設定などが随所に混在し、この劇場版3作目はどの時間軸にも繋がっているとも、繋がっていないともいえる。

当初アニメとして企画・決定していたがゆうきまさみによる漫画が先行してスタートし、その後アニメ作品がリリースされた。また、先立って『月刊ニュータイプ』が別冊付録等でPRしていた。全編通してほとんどのレイバーやその他メカニックデザインは出渕裕によるものであるが、モニターコンソールなどの各種インターフェイス類やサブメカを佐山善則、航空機関係を主に河森正治、陸上・海上自衛隊の装備などをカトキハジメに分担する事も多かった。また、出渕は劇場版3作目のスーパーバイザーや、エピソードによっては監督や絵コンテを務める事もあり、様々なかたちでシリーズに関わっている。

1980年代初頭のリアルロボットアニメブームを経て、1980年代後半から1990年代中期までは、ロボットアニメが枯渇しており、テレビ放映作品に関しては数える程だった。そういった中で、初期OVAシリーズは大ヒットを記録。アニメファンの話題を集める事となった。これを受ける形でOVAシリーズの延長、劇場作品化、TVシリーズ化と勢いは留らなかった。当時の人気アニメ作品はTV版→映画化→OVA化というプロセスが一般的とされていた為、その様子は「逆流現象」とも評された。従来の連続アニメ作品の多くがスポンサーの販売する玩具などの関連商品の宣伝媒体であったのに対し、本作は作品その物をコンテンツとして販売するビジネスモデルを確立した事でも注目を浴びた。その後、二度目のOVA化と1993年公開の事実上の完結編にあたる劇場版第2作目をもって、アニメシリーズは一応の終止符が打たれた。さらにコミック版の完結を経て、およそ9年後には劇場版3作目にあたるスピンオフ的作品『WXIII』、『ミニパト』が劇場公開されている。

現実味を帯びた舞台設定により、諸外国では高い人気を誇る。また、アニメで榊清太郎役を演じた阪脩は劇場版WXIII公開記念ラジオ番組内で「シリーズが終わって10年以上経つのに未だに榊についてのファンレターが来る。あのキャスト、スタッフ陣は正にライトスタッフだった」と語っている。現在もなお関連グッズが数多くリリースされ続けている。

一時期(1991~1992年)にテレフォンサービスが配信され、本編等では語られる事のなかったキャラクターの裏話などがキャラ自身によって語られた。この音源はその後OVA新シリーズのDVD版に収録されている。

1982年、当時まだサラリーマンと漫画家の二束のわらじをはいていたゆうきまさみは、西武池袋線江古田駅前の喫茶店まんが画廊で、当時高校を卒業して間もない川村万梨阿や、とまとあきらと集まってはアニメ、SF、漫画等について語り合っていた。この頃仲間内では架空のアニメ番組の設定、ストーリーなどを考える「企画ごっこ」という遊びが流行っており、この「企画ごっこ」で最初に考え出されたのが『シェーラザード』という、宇宙船乗りの養成学校に通う生徒たちが活躍する、星間戦争をテーマにした物語であった。『シェーラザード』とパトレイバーとの共通点は主人公が女の子であることくらいであったが、当時SFで女の子が主人公であるものなど皆無に近かったことを考えると画期的なことであった。

次に考え出されたのは『電光石火ギャラクレス』である。未来のある銀河系で力仕事を請け負う会社の社長代理であった主人公が、作業メカ『ギャラクレス』で銀河を駆け巡るライトコメディーで、『ギャラクレス』は『機動戦士ガンダム』や『伝説巨神イデオン』などの、キャラクターが死亡するアニメに対し疑問を感じた一同が「キャラクターが絶対に死なないロボット・アニメ」というコンセプトで企画された。このコンセプトはパトレイバーにも受け継がれており、また、前作と同じく主人公は女の子であった。

『ギャラクレス』の次に考え出されたのは『バイドール』で、とある宇宙の植民地が舞台で、惑星開発及び土木作業用に広く普及した人型ロボット『レイバーマシン』の悪用に対して、主人公の所属する警察側もレイバーマシンで対抗する、といった内容であった。この『バイドール』は、レイバーという呼称の登場、主人公が女の子で警察機構に所属している、『ファルコーネ・シャフト(通称:シャフト)』という巨大企業かつ犯罪組織の登場、科学特捜隊をモデルにした制服など、パトレイバーとの共通点が多く見られるようになった。

ゆうきはこの『バイドール』に、舞台が第二次関東大震災により半分が壊滅した東京となるなどの変更を加え、知り合ったばかりの出渕裕に見せた。出渕はこの企画を気に入り、TV化実現に向けて動き出した。出渕はSF作家である火浦功に協力を求め、タイトルも『機動警察パトレイバー』となった。この頃のパトレイバーには、特車二課が存在せず町の警察署にパトレイバーが配備される、主人公の名前が『速見翼』であるなど現在のパトレイバーとはかなり異なっていた。この企画は、買い取りを前提に製作プロダクションに持ち込まれたが却下され、宙に浮いてしまう。また、この後火浦は多忙になりパトレイバーの企画からは抜けることとなった。この時一緒にダミー企画として持ち込んだのが、後の『未来放浪ガルディーン』である。

1986年、ゆうきは出渕から伊藤和典を紹介され、出渕は伊藤にパトレイバーの話を持ちかけた。伊藤は『テクノポリス21C』を連想したことと「ブッちゃん(出渕)のプレゼンテーションが下手だった」ことであまり良い印象を受けなかったが、「『ポリスアカデミー』のようなノリで」やることを出渕に相談し、ゆうき、出渕、伊藤の三人で再度設定を煮詰めることとなり、コンセプトは「焼き魚志向の生活アニメ」とした。同年秋には高田明美がキャラクター・デザイナーとして参加した。これは、ゆうきによれば「名もない漫画家がしゃしゃり出てアニメ作るよりも、キャリア(業界の信用)のある人をキャラデザインに立てたほうが良いと思った」ことと、「メカ・アニメのキャラデザインを女の人がやるのって初めてだろうし、ストレートに自分の絵がアニメになるのって面白くもなんともないよね。俺、パトレイバーを作りたいんじゃなくて、見たいんだもん」という理由による起用であった。その後作業は順調に進み、伊藤家のクリスマス・パーティーでバンダイの鵜之沢伸プロデューサーにプレゼンテーションすることとなった。

この結果TVシリーズ化は実現しなかったものの、異例の全6巻のOVA化が決定した。この頃参加したのが押井守であり、「ヘッドギア」のメンバーが出揃うこととなった。押井はメカデザインに「風呂釜のような作業機械に手足」という案を出したが、ゆうきは初期の段階から「目の前に立ちふさがる巨人の影に思わずブレーキを踏んでしまう」ような「あからさまな人型シルエット」をイメージしており、却下された。しかし、最終的には敵方レイバーとして作中に共存することとなった。

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